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今月12日にAmazon社はKindle Fire上のゲームの機能を拡張する「GameCircle」を発表しました。モバイル領域でその存在感を大きくするAmazon社のこれまでと今回の発表から見えるこれからの戦略についてまとめました。

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                              画像引用元(Amazon.com
Amazon社は電子書籍端末である「Kindle 」の販売やオンラインストア「Amazon.com」用アプリの提供を行なっていましたが、そのスマートフォンとタブレットを含むモバイル領域への本格的な進出は2011年に「Amazon Appstore」のオープンから始まりました。


独自アプリストア「Amazon Appstore」

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                         画像引用元(Amazon Appstore
「Amazon Appstore」はAmazon社が運営する独自のAndroidアプリストアとして2011年3月にオープンしました。その特徴は審査を設けることによるアプリの質の保証と、オンラインストアAmazon.comのアカウントによる支払いの容易さにあります。また、アプリの価格決定権はAmazon社にあり、同社が自由に割引販売を行うことができるようになっています。

Amazon AppstoreをAndroid端末で利用するにはAppstoreアプリのダウンロードに加え、端末の設定で「提供元不明のアプリ」のダウンロードを許可する必要があります。そのハードルが高いこともあり、オープン当初Amazon Appstoreからのアプリダウンロード数は芳しくありませんでした。

しかし、Kindle Fireの登場によりこの状況が変化しました。


自社製タブレット「Kindle Fire」

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                              画像引用元(Amazon.com
Kindle Fireは7インチのカラータッチディスプレイを備え、Android 2.3をベースにしたカスタムOSを搭載しています。199ドルと他のタブレット端末と比較して安価なこともあり、昨年11月に発売されると3カ月で600万台以上を売上、Androidタブレットシェアの54.4%を占めるまでになりました。

Kindle FireはAmazon Appstoreからしかアプリをダウンロードすることができません。Kindle Fireの大ヒットによりAmazon Appstoreのアプリダウンロード数は伸び、その強みである審査によるアプリの質とAmazon.comアカウントによる支払いの容易さが活かされました。

Apple Appstoreと比較してAndroid公式アプリストアであるGoogle Playは収益を上げにくいことが指摘されていましたが、Amazon Appstoreではその点が改善されているというデータが発表されました。Flurry社が発表した同じアプリを各ストアにリリースした場合のDAU(Daily Active User)当たりの収益を比較したデータによるとAmazon AppstoreにはGoogle Playの3倍、Apple Appstoreに近い収益性があることがわかります(下図左)。また、TinyCo社が自社タイトル「Tiny Village」に関して発表した同様のデータによると、Amazon Appstoreの数値はApple Appstoreの180%に登ります(下図右)。

  ■Flurry社の調査結果               ■TinyCo社の調査結果

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Amazon AppstoreとKindle Fireによってモバイル領域において一定の成功を収めたAmazon社は今回発表した「GameCircle」によってモバイルゲームでの拡大を目指します。


ゲームの拡充を狙う「GameCircle」

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                           画像引用元(Amazon Appstore Developer Blog
Amazon社は今月12日にKindle Fire向けゲームの機能を拡張する「GameCircle」を発表しました。現在Amazon Appstoreのアプリ数は3万強と公式ストアの60万本に比べると非常に少なくなっています。Amazon社は「GameCircle」によって自社アプリストアの魅力を増し、より多くのゲームを載せることを狙います。

今回発表があった「GameCircle」はゲーム中に達成した記録を簡単に見ることができる「Achievements」、ゲーム内の他のプレイヤーのスコアやランキングを表示する「Leaderboards」、ゲームデータをクラウド上に保存して異なる端末でも前回の続きからのプレイを可能にする「Sync」の3つの機能を備えています。公開されたAPIによってこれらの機能をKindle Fire向けのゲームに簡単に組み込むことができます。GameCircleはApple社がiOS端末に提供する「Game Center」とよく似ていますが、異なる点が2つあります。ひとつはソーシャルグラフを持たないこと、もうひとつは「Sync」機能を持つことです。


■ゲームユーザーを増やすための「GameCircle」

GameCircleで提供される「Achievements」と「Leaderboards」はパズルなどのシンプルなゲームと相性が良いものです。シンプルゆえに単調になってしまいがちなゲームに達成項目や競争の要素を加えることによってメリハリを与えることができます。Kindle Fireは電子書籍端末から派生したものであることもあり、書籍や雑誌の閲覧を主な利用目的とするユーザーが多くいます。今回のGameCircleによって初心者にもわかりやすいシンプルなゲームを増やし、ゲームユーザーを増やす狙いがあると考えられます。

また。GameCircleはKindle Fire向けのサービスであることからiOSやAndroid全体から見ればユーザー数は少なく、現時点でソーシャルグラフを提供したとしてもその効果は限定的なものになるでしょう。


■「Sync」が示唆する独自スマートフォン

Syncは異なる端末間でゲームの進行状況を共有できるものですが、現在はKindle Fireは1種類しかなく、この機能の恩恵を受けることのできるユーザーは非常に限られます。Amazon社は自社でスマートフォンの開発が噂されており、今回のSyncはそのためのものであると推測されます。家でタブレット端末でプレイしていた続きを外出時にはスマートフォンでプレイできることは魅力となります。


Amazon社のプラットフォーム戦略


Apple社はiOS端末で収益性の高い優れたプラットフォームを築いています。これはiTunesを中心に整備された支払いシステム、審査による質の保証されたアプリストア、統一された端末群によって成り立っています。

支払いシステムとアプリストアの質に関してはAmazon社も優れたものを保有しており、今後はアプリの種類と端末のさらなる普及がカギになってきます。Amazon社は優れたプラットフォームをAndroid上に築くことはできるのでしょうか。今後の動きに注目が集まります。

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About the Author
Wataru Tanaka is the chief editor of Social Game Report and writes about mobile social gaming. He works at Mynet Japan, a social game developer. His vision is to create worldwide network and enhance the industry, take it to the next level where everyone can enjoy communicating each other through games.