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Mobageで配信されているDeNAの内製ソーシャルゲーム最新作『夕暮れのバルキリーズ』は7/30日にリリースされ、ユーザー数はすでに30万人を突破しています。今回はこのタイトルを開発したDeNAの塩原一慶氏と岩尾賢一氏に行ったインタビューについてお伝えします。

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インタビューに答えていただいた塩原氏(左)と岩尾氏(右)。

-まずは自己紹介をお願いします

岩尾氏
私は以前、コンシューマ業界におりまして、『バイオハザード』や『アインハンダー』、『パラサイト・イヴ2』、『ファイナルファンタジー11』などを制作しました。また、映画『ベルセルク』などアニメーション制作にも携わっていました。DeNAに来てからは『神々のエンブレム』や『ディズニーパーティ』、海外向けの『Urban Survivors』や『Blood Brothers』などの制作に携わりました。タイトルにより関わり方は異なりますが、主にゲームコンセプトや世界観などを担当しています。たとえば、セールスポイントを決めたり、キャラクターを作ったり、ゲームシステムを構築したり、シナリオを書いたりといった仕事ですね。現在は『夕暮れのバルキリーズ』に携わりつつ、別のタイトルも制作中です。

塩原氏
私は以前、金融機関や流通企業等大企業に対してITコンサルティングを行なっておりました。DeNAに入社後はEC事業のビッターズでサービス企画やBPR(Business Process Re-engineering)などに携わりました。その後、ソーシャルゲーム立ち上がり初期からSG事業運営に参画。現在は複数のタイトル企画に横断的に携わっています。中でも本作『夕暮れのバルキリーズ』は、私が「よし、次はこんなのを作ろう!」と言いだして立ち上げた思いれのあるタイトルで、初期から現在まで深く制作に携わっています。


強いIPを生み、育てる


-『夕暮れのバルキリーズ』の企画はどのように始まったのでしょうか
 
バルキリーズトップ
塩原氏
当社では、新規にゲームを作り始めるときに、まず主眼とする要素を最初に決めます。例えば、それはゲームシステムであったり、世界観であったり、それは作品ごとに様々です。本作の場合、「財産となるIPを生み、育てる」ということを主眼に定めました。求めるユーザー層にまずしっかりアプローチし、その後、裾野が広がっていく中長期的な戦略を備えたIPです。その旨を岩尾に相談したところ、その戦略に合わせたデザイナーの紹介やアニメ制作会社と組むという制作方式の提案があり、ひとつひとつ具体化していきました。

岩尾氏
最初に塩原から相談を受けた際に「異世界で戦う女子高生」というテーマはすでに固まっていました。それを踏まえて私からは、単なるファンタジー世界ではなく「女子高生の生活空間から入り口がいつでも開ける、身近な接点をもつ異世界」であるということと「実在する都市…たとえば、渋谷や新宿と対をなす、異形の仮想都市空間」という提案をさせていただきました。その方が遊んでくださるユーザーさんが予備知識なく入れますし、女子高生という要素も活かせると思ったからです。
 

-主人公が3人組というのはどういった経緯で決まったのですか

塩原氏
私は強いIPを生み出すためには、ブランドエクイティ(ブランドの資産価値)がどこにあるのか、その見極めが大事だと考えています。例えば、同じ作品にキャラクターが1000体も登場したら、個々のキャラの存在感は相対的に薄まってしまうことでしょう。昨今のソーシャルカードゲームの多くは美麗なカードをそろえていますが、キャラクターそのものを立てることに注力した作品はあまり見かけません。無論、『ワンピース』などはキャラクターが立っている訳ですが、それは漫画やアニメがあってこそ。ゲーム発でオリジナルIPを送り出すためには、キャラクターの数を絞り込むことは、むしろ必然だったのです。

岩尾氏
本作の主人公は3人組なのですが、その人数を決める際に念頭にあったのは、いわゆるスーパー戦隊モノや、セーラームーンなどの魔法少女モノです。スタート時から賑やかに5人で、という案もあったのですが、キャラクターの定着や物語の進行も考えて、3人という数に決めました。


ノスタルジックな要素を大事に


-『夕暮れのバルキリーズ』ではキャラクターがジョブチェンジしますね
ジョブチェンジ
塩原氏
UI、UXにこだわることで、ブラウザで提供できるサービスには、まだまだ向上の余地があります。がんばれば、私たちが昔遊んだファミコンやスーパーファミコンのゲームに近い体験だって、ユーザーさまにご提供できるのです。できるんだったら、昔懐かしいRPGのあの感覚にも挑戦してみようと…。なぜなら、「あ、これこれ!」というノスタルジックな感覚には、すばらしい訴求力があると思うんです。キャラクターがジョブ=姿を変えながら成長していくという、RPGの王道とも言える要素を入れることにより、多くのユーザーさまにノスタルジアをご提供できたのではないでしょうか。

岩尾氏
魔法少女モノと言えば「変身」は定番ですよね。本作におけるジョブチェンジは、変身そのものなんです。女の子が憬れの職業、例えば、パティシエやアイドルに変身する要素をジョブは体現しているんです。


-彼女たちのペットのような、モバクリも登場しますね。

モビクリ
岩尾氏
ソーシャルゲームでは特にユーザーさんにすんなり入ってもらうことが非常に大切であると思っていまして、あんまり独自性を発揮してしまうとお約束の部分がなくなってしまいます。モバクリは、魔法少女モノの韻を踏むために欠かせない要素と考えており、多くの作品がそうであるように、本作でもストーリー進行を担う狂言回しの役目を担っています。デザインとしては、まず現実世界ではシニカルな猫、仮想世界ではクールな長靴をはいた猫、という変身キャラクター「ダルニャン」を制作しました。これに手ごたえを感じたので、他のモバクリも同様の方式でデザインしていきました。


PC紹介サイトを拝見すると非常に細かいところまで設定されていますよね

岩尾氏
ありがとうございます。私がゲームを作るときのポリシーなのですが、100の要素を考えておき、その内の2~3ぐらいを作品の中で具体的に提供するのが、ユーザーさまにとって程よく、作品の深みも出ると考えて制作しています。一種の隠し味ですね。もっと物語の先を知りたい、隠された世界の秘密を知りたい、と思っていただけたらうれしいですね。


ブラウザゲームという選択肢は魅力的


-本作はブラウザアプリですが、ネイティブとブラウザについてはどのように考えていますか

塩原氏
当社では、そのスタンスをはっきり打ち出してはいません。むしろ、プロジェクトによって、サクサク感を出したいのか、サーバサイドを入れるか等、各プロジェクトのコンセプトに合ったものを都度選択しています。アプリですと、どうしても通信環境やファイル容量の話がネックとして浮上してきます。私たちはプレイ開始へのスピード感も非常に重視しており、できるなら長いダウンロード時間でユーザーさまをお待たせしたくありません。無論3Dを売りにしたようなゲームであれば、アプリという選択肢も十分ありえますが、2Dのゲームであれば、サクサク遊べるブラウザゲームという選択肢は魅力的なのです。


-『夕暮れのバルキリーズ』ではチームは固定ではなく、イベントごとに自動で編成されますが

塩原氏
ゲームのプレイ頻度が近い人同士…例えば、毎日朝しかプレイしない人は、同様に朝型プレイの人と組んだほうが絶対に面白いと思うんですよね。それに、初めからいきなり、この5人でやってください、というシステムにすると、プレイスタイルが合わない人同士のチームになった場合、きっとつまらないことでしょう。それらを防止するために、イベントマッチングは運営側で最適化を図る、というプロセスを採用しています。


製作者にとって大切なこと


-ソーシャルゲームを作るときに大事にしていることを教えて下さい

岩尾氏02
ソーシャルゲームを制作する上で、私が大切だと考えていることが3点あります。まず「スピードを出す元気」と「アイディアを転換する勇気」。ソーシャルゲームの開発はスピード感が命です。スピードを出すためには、プロジェクトを日夜推進する元気が何より必要ですし、作品にとって大事な要素は何かを日々見極め、時に捨て、時にドラスティックに変更する勇気も同時に必要とされます。経験として、ひとつのアイディアに固執したら、ろくなことにはなりませんからね。
あと、もう一点は相反するようですが、「クオリティをあきらめない根気」です。作品に魅力を感じていただいているユーザーさまの賑わいがあって、始めてソーシャルゲームは成り立つもの。たとえ、制作工程上あきらめた要素があったとしても、代わりの魅力を作り出して補填し、作品全体の価値を下げないように心がけています。こういったサイクルを回す面白さはソーシャルゲーム会社の醍醐味じゃないかと思っています。


塩原氏05
スピード感や自己否定する力というのは、私も非常に大事だと思っています。制作過程で、思い入れの強い要素は自然と出てくるものですが、それを一度冷静になって必要かどうか判断する高所からの目が重要です。その目を得るために、私たちのチームでは時々思いっきり自分たちの作品にダメ出しする時間を設けているんですよ。とても辛い時間ですけれど有意義な時間でもあるのです。

さらに、3点申し上げますと、1点目は、ロジックがしっかりしていること。ボタンのレイアウト、ゲームの導線、テキストの入る場所など、ゲームを構成するすべてのものには、何故そうであるのか理由があるべき。品質を突きつめるためには、妥協を許さない論理的なスタンスが大切なのです。
2点目は、先ほどの話と少々矛盾していますが、クリエイティビティを理解しようとすること。ここでいうクリエイティビティとは、有名な絵画のような芸術を語る、描く力ではなく、例えば、誰かがAKBのメンバーの猛烈なファンであると聞いた時に、その理由を理解できる、共感できる、感性のことです。できれば、世の中で流行っているもの全てを説明できる力を養いたいものです。流行に対して鈍感では、決してよいサービスは作れませんからね。
3点目は、突きつめること。自分の感性がユーザーさまのニーズとずれてしまうことはままあることです。そのときに、ぼんやりしたペルソナを思い浮かべるのではなく、誰か具体的な人を定めて、その人をどうやったら幸せにできるか、徹底的に考えてみること。そうすることで、サービスに深みが出て、ひいては多くのユーザーさまにも認められるコンテンツが作れるんじゃないかと思っています。


-最後に『夕暮れのバルキリーズ』でここに注目して欲しいという点をお願いします

岩尾氏
あかね、あおい、キロット、その他の登場人物も、どれも作りこんでいます。例えば、笑顔ひとつとっても、人物によって、シチュエーションによって表情は異なるはずと考え、ひとつひとつの表情や台詞をおろそかにせず、愛情を注いで作っています。みなさんも、生きている友だちのように彼女たちを感じていただけたら、制作者冥利につきますね。

塩原氏
『夕暮れのバルキリーズ』は、フィーチャーフォンとスマートフォン、どちらでも遊べます。無論、どちらでも楽しめるように最大限の注意を払っていますが、特にスマホの場合、ブラウザでここまでできるのか、というぐらい操作性にこだわっていますので、是非一度手で触って、その操作性を体験していただきたいと思います。また、岩尾が申しましたように、やればやるほど見えてくる世界観の奥深さや、ジョブレベルを最大まで上げた時のさらなる隠し要素など、様々な展開も準備しておりますので、すでにプレイされている方は、今後も是非ひきつづきお楽しみください。

-本日はどうもありがとうございました


『夕暮れのバルキリーズ』
『夕暮れのバルキリーズ』は、"変身ヒロイン"をテーマに女子高生たちの活躍を描いたソーシャルRPGです。本作では、普通の女子高生だった主人公たちが、ふとしたことをきっかけに「現実世界」と「仮想世界ドラシル」を行き来し、世界を守る戦士「バルキリー」として成長していく姿が描かれます。
ダウンロードはこちらから
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About the Author
Wataru Tanaka is the chief editor of Social Game Report and writes about mobile social gaming. He works at Mynet Japan, a social game developer. His vision is to create worldwide network and enhance the industry, take it to the next level where everyone can enjoy communicating each other through games.